Jean-Philippe Rameau    1683〜1764

 ジャン=フィリップ・ラモーは、かつてブルゴーニュ王国の首都として栄え、東西と南北の交通路が交わる芸術の都、フランスのディジョンに1683年に生れました。その生涯最初の40年ほどは、一地方のまだそれほど有名ではない一音楽家でした。短いけれどもラモーにとって貴重な体験となったミラノへの短い旅のあと、リヨンのオペラ座でヴァイオリン奏者を務め、その後アヴィニョンを初め、クレルモン、ディジョン、パリでオルガン奏者を務めました。そしてパリに居た1706年に、『クラヴサン曲集第1巻』を出版します。1713年頃、リヨンに移りリヨン・コンセールのためにグラン・モテを作曲しました。その後1722年再びパリへ移りこの地を生涯の住処としたのです。この年ラモーはあの有名な『和声論』を出版し、パリの人々から大きな注目を浴びました。ここパリでは、ラモーはオルガニストとしては成功しませんでしたが、ラモーの作ったクラヴサン曲、カンタータ音楽、劇場音楽はかなりの成功を納めました。

そのうち弟子もとるようになり、その中の一人マリ=ルイーズ・マンジェオは1726年にラモーの妻となりました。その後1731年に出版した『クラヴサン曲集』(第3巻)は、1724年に出版した『クラヴサン曲集』(第2巻)同様、表題音楽に大きく寄与したと言えるでしょう。第1巻から第3巻に渡る『クラヴサン曲集』には50曲近い小品が収められており、よりハーモニー(和声)を重視した表現が特徴となっています。また1726年には『音楽理論の新体系』を出版、それは大いに議論されるであろう論文でした。

 このようにラモーは、近代和声理論を確立するのに重要な役割を果たした音楽理論家でもありました。

 そして50歳になった時、ラモーはオペラ作曲家としての道を歩み始めます。その第1作目が《イポリートとアリシ》で、かなりの評判を得たと同時にその斬新で力強い感情表現、豊かなオーケストレーション、劇的ハーモニー効果が多くの人々の注目を集め、その後発表したオペラとともに、音楽史上有名な「ブフォン」論争を引き起こすきっかけとなりました。この論争は簡単に言えば、「イタリア音楽のほうが優れているか」「フランス音楽のほうが優れているか」を問う論争で、当時のフランスの知識人を自認する人々のほとんどがこの論争に参加し議論を戦わせたのでした。ラモーは、自身の意図に関わらずフランス音楽の象徴として矢面に立たされたのでした。

 しかしラモーは、そのような中でも1731年にパリの裕福な徴税請負人ラ・ププリエール家の音楽監督をきっかけに、音楽的に恵まれた環境の中で創作活動を続け次々に作品を生み出していきます。1745年にはルイ15世の宮廷作曲家に任命され、そこでコメディ・バレエ《ナヴァールの王姫》(台本:ヴォルテール)、《プラテ》、《アムールの驚き》などを創作しました。こうしてラモーのヴェルサイユにおける地位は確固としたものとなり、ラモーの作品はパリおよびパリ近郊で広く受け入れられ、またその音楽理論は学会で高く評価されたのでした。

 最晩年の1752年から死の年1764年までの間は、作曲も執筆活動も次第に少なくなり、マッテゾン(音楽家・音楽理論家)やマルティーニ(音楽家・音楽理論家)との文通をして時を過ごしたようです。ラモーの和声理論は、この現代においても調性和声の研究の基礎となっています。ラモーが死んだ時、1500人以上の人々がパリで行われたラモーの告別式に参列しました。

【ラモーのオペラ作品】
1.イポリートとアリシー Hippolyte et Aricie(プロローグと3幕とエピローグ)1733 初演(パリ)
2. 優雅なインド Les Indes galantes(オペラ・バレエ、プロローグと4つの挿入バレエ)1735 初演(パリ)
3.カストルとポルクス
Castor et Pollux(プロローグと5幕)1737初演(パリ)
4. エベの祭(または叙情詩の才人)
Les fêtes d’Hébé ,ou Les talents lyriques(オペラ・バレエ、プロローグと3つの挿入バレエ)1739初演(パリ
5.ダルダニュス Dardanus(プロローグと5幕)1739初演(パリ)

6.ナヴァールの王姫 La princesse de Navarre(コメディ・バレエ、3幕)1745初演(ヴェルサイユ)
7.プラテ Platée(プロローグと3幕)1745初演(ヴェルサイユ)
8.詩神ポリムニの祭 Les fêtes de Polymnie(オペラ・バレエ、プロローグと3つの挿入バレエ)
9. 栄光の殿堂 Le temple de la gloire(オペラ・バレエ、5幕)1745初演(ヴェルサイユ)
10.ラミールの祭 Les fêtes de Ramire(1幕)1745初演(ヴェルサイユ)
11.イメンとアムールの祭(またはエジプトの神々) Les Fêtes de l’Hymen et de l’Amour,ou Les dieux d’Egypte(オペラ・バレエ、プロローグと3つの挿入バレエ)1747初演(ヴェルサイユ)
12.ザイス Zaïs(プロローグと4幕)1748初演(パリ)
13.ピュグマリオン Pygmalion(1幕)1748初演(パリ)
14.アムールの驚き Les surprises de l’Amour(プロローグと2幕)1748初演(ヴェルサイユ)
15.ナイス Naïs(プロローグと3幕)1749初演(パリ)
16.ゾロアスター Zoroastre(プロローグと5幕)1749初演(パリ)
17.リニュス Linus(3幕)1751作曲
18.花飾り(または魔法の花) La guirlande,ou Les fleurs enchantées(1幕)1751初演(パリ)
19.アカントとセフィーズ(または同情) Acanthe et Céphise, ou La sympathie(3幕)1751初演(パリ)
20.ダフニスとエグレ Daphnis et Eglé(1幕)1753初演(フォンテーヌブロー)
21.リシスとデリ Lysis et Délie(1幕)1753作曲
22.シバリスの人びと Sybarites(1幕)1753初演(フォンテーヌブロー)
23.オシリスの誕生(またはパミールの祭) La naissance d’Osiris, ou La fête Pamilie(1幕)1754初演(フォンテーヌブロー)
24.アナクレオン(第1作) Anacréon(1幕)1754初演(フォンテーヌブロー)
25.ゼフィール(ディアナのニンフ) Zéphyre(Les numphes de Diane)(1幕)1754頃作曲
26.アナクレオン(第2作) Anacréon(1幕)1757作曲
27.知らずにだまされた代理人 Le procureur dupé sans le savoir 1758/59初演(私的に上演)
28.遍歴騎士 Les paladins(3幕)初演(パリ)
29.アバリス(または北風の神) Abaris,us Les Boréades(5幕)1764作曲
30.ネレとミルティス(愛の青春) Nélée et Myrthis(Les beaux jours de l’amour(1幕)
31.イオ Io(1幕)

(*表記は『クラシック音楽作品名辞典 改訂版』井上和男編著 三省堂 による

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